読書: 夜想曲集 Nocturnes カズオイシグロ

原題はNocturnesと複数形、翻訳も夜想曲とはせずに、集がつきます。

夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)

カズオイシグロの短編集。どれも哀愁ただよう素晴らしい作品だが、中でもモールバンヒルズが好き。

イングランドの片田舎を思わせる有名な音楽家の生家、そして夏の何もないカフェに訪れる音楽家の老夫婦が、ロンドンから来た音楽家の若者と何気ない話をするそれだけの話。いつも思うのが、カズオイシグロ氏の小説は、日本人好みの伏線とその回収といった分かり易い概念はなく、全ての文章と文脈全体で一つの世界観を作り上げる。イギリスの何もない丘、モールバンヒルズにいつか行ってみたいと思いました。新しい常態でいつになることやら。